アートの定義

 今までの考察の中で、アートの定義を


・アートは過去のメディアと未来のメディアにおいて表現されるもの
・個人の表現であるが、個人を超えた(精神性の)広がりを持つもの
・長期的な市場価値を持つもの


としてきた。


次に、大衆芸術について考察していきたい。

大衆芸術、つまりエンタテインメントに属するものは、
小説、映画、漫画、テレビドラマ、アニメ、ゲーム、大衆音楽(歌謡曲)などであろう。
小説は、純文学と大衆文学に分かれるので、純文学はどちらかというとアート志向である。

どちらにせよ、
主流のメディアの中で流通するものであり、集団的な工程で製作される、又は流通されるもので、
産業として成立しているのものだと言える。

アートとエンタテイメントは、創作物として価値の高低を計れるものではない。
例えば、アートをハイカルチャーとし、エンタテインメントをサブカルチャーとして位置づけるものもあるが、
産業規模の大きさで言うと、明らかにエンタテインメントが主であり、アートは副である。
関係している人も圧倒的に、エンタテインメントの方が多い。
しかし、その中でも小説や映画のような比較的古いものは高尚で社会的価値が高く、
漫画、アニメ、ゲームなど比較的新しいものは通俗で社会的価値が低い、とされているようなところがある。
それは、エンタテインメントのアート化だと言ってもよいだろう。だから、そこにもメディアの新旧が影響しているのだ。


なにゆえ、同じ表現の中で、このような二つの考え方が生まれたのか。
その歴史はそれほど長くはなく、近代において形成されたものであろう。
つまり、大衆が誕生したことで、産業としてのエンタテインメントが要請されたわけである。

アートは、非大衆的で特権的なもの、という要素が大きい。
消費者は、上流階級のものである。

どちらにせよ、大衆の誕生が、逆説的に、王や貴族、資本家という特権階級に由来するアートを、
非大衆的なものとして浮かび上がらせたということになる。