パワースポットブーム来る
昨今の不況に影響を受けてか、「パワースポット」がえらく流行している。同じく数年前から流行している「スピリチュアル」なども、英語に直しているものの、いわゆる霊性や聖地の言い換えでしかない。
特に縁結びから、このブームは火がついたようだが、極めて原初的な形で信仰が復活しているのには不思議な感じを覚える。いよいよかつての村落共同体や地域の鎮守の神様、寺院、各家庭で行われていた儀礼が失われ、一見新しいかのような信仰ブームが訪れたわけだ。
いわゆる高度経済成長とともに、地方から都心に出てきた団塊世代が、地域の古い風習をまったく自分達の子供に伝えてこなかったつけが、ここにきて現れている。日本の神や信仰形態は、共同体や家族を基に形成されているため、核家族のような形態になったとき、信仰のプリンシプルを理解していないかぎり、伝承されることはない。
信仰のプリンシプルと言っても、神道には教義がなく、仏教の理解は宗派が多く、諸説あるため難しく、儒教は封建制度の衰退とともに否定されている。したがって、そのような信仰観、それにともなう儀礼について、団塊世代はまったくと言っていいほど理解していないのだ。戦後民主主義教育とは、実質、神を否定した共産主義教育に近かったと言えるかもしれない。
その子供達は、自らの運命を切り開くために、神頼みするわけだが、その中において神道に流れ込んだ仏教や儒教、そして共同体の倫理や道徳を取り戻そうという動きがないと、あまりに表層的だと言うしかない。
そろそろ戦後民主主義幻想も崩れてきたことだし、日本の伝統について考えるいい時期かもしれない。
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