白鵬と双葉山

 白鵬双葉山は、双葉山の持つ69連勝に白鵬が迫ったこともあり、白鵬自身が双葉山を尊敬していることを公言し、双葉山のビデオを繰りかえし見て研究していることからもよく比較される。
 残念ながら、先場所で稀勢の里に負け、双葉山の69連勝を追い抜くことはできなかった。多くの人が白鵬双葉山に並び、追い越すことを予想していたのではないだろうか。

 しかし、その後のNHKのドキュメントと、今場所、稀勢の里に負け、その次の試合も足捌きが悪くもたついたのを見て、双葉山に追いつけない理由がある程度わかった。

 白鵬双葉山の言っていた「後の先」を追及している。「後の先」とは、ボクシングで言えば、カウンターであり、後に攻めたのにも関わらず、先手を取ってよい組み手にもっていくことを言う。
 NHKのドキュメントでも詳細に分析されていたが、白鵬は下半身が強く、上半身が柔らかいので、相手の攻撃をうまく吸収しながらよい組み手にもっていくことができる。下半身は上半身の動きとは対照的にまったく動いてないことが多い。実は、それが白鵬の長所でもあり、短所にもなっているのではないかと思われる。

 なぜなら、受けるということに重点を置きすぎているために、受けずに足を主体として攻めなければならないとき、足捌きがどうも追いついていないように見えるのだ。足捌きが悪いために、足がもたつき、横からの直線的な攻撃に非常にもろい。稀勢の里戦で負けた2敗とも、組み手がとれない状態でも、横からの早い攻撃に対応できなかったところがあったように思う。

 逆に、双葉山は、先日紹介した元一ノ矢関も分析しているが、足をこまめに動かして、相手の体勢を崩すことを得意にしていたようだ。双葉山のバランスの良さは、どうやら、船頭の仕事をしていたところにあるようだが、足を使って相手をかわしたり、攻撃したりすることに長けていたようだ。

 一見、似ているように見える白鵬双葉山、実は、ある意味では対極的であり、それが2人の
強さの違いに表れているように思える。白鵬が、これから、足運びについてどれだけ、双葉山に近づけるかが、双葉山の大記録を抜けるかどうかのキーとなりそうだ。

究極の身体 (講談社+α文庫)

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