ミュージッククリップのミニ映画化

 前々から思っているんだけど、僕はドラマ仕立てのミュージッククリップがあまり好きではない。ドラマにする必然性のないような歌詞でもドラマにするディレクターがいる。おそらく映画好きなんだろうと思うけど、本を読みにくくするデザイナーのように、過剰なドラマ仕立てには腹が立つ。歌を歌としてではなく、比喩を使わないと表現できない想像力の貧困さの方が目につくし、歌手とは関係のないディレクターの趣味性を見せ付けられるようで不快だ。
 中には名作もあるから、まったく否定する気はないのだけど、最近、その手のものがますます増えているのは気になる。(昔、「東京少年」というバンドのクリップがいいなと思っていたら、後で岩井俊二だったということがわかったこともある。)
 かつて、ロマンポルノが映画監督のインキュベーション的役割を果たしていたことがあったそうだが、今やミュージッククリップがその役割を担っているのは間違いないだろう。だけど、音楽家と関係のないエゴでクリップを作るのはやめてもらいたいと思う今日この頃である。