マクルーハンの地勢学

僕は家にケーブルテレビをひいているのだけれど、チャンネルが多いため、地上波放送の番組が面白くなかったらいろんなチャンネルを入れ替わり回してしまう。番組のプログラム表などほとんど見ていないので、よく言えばそのときそのときの出会いを大切にしているのだ。
なかでもたまたまつけた番組が面白いことがよくあるのが放送大学の番組だ。放送大学の仕組みはいまいちわかっていないのだが、番組を見ながら放送大学の講義を受講できる、というものだと思う。放送大学はメディアを通じた高等教育というコンセプトからなのかもわからないが、メディアリテラシーに関する講義が多いように思う。とは言っても僕がたまたまチャンネルを回し、さらに見続けているものがそういうものに限られている、ということなのかもしれない。
先日はマーシャル・マクルーハンのことについての講義だった。マーシャル・マクルーハンは、メディア論に関して今日にも通じる示唆的な命題を数々提示した批評家として知られている。詳しくは知らないけれど。その講義で面白かったのは、現在もカナダのバンクーバー(だったかな)の大学にあるマクルーハン研究施設の研究者の話で、なぜマクルーハンがそのような卓越したメディアに対する思索を養えたかというと、カナダがアメリカに近いため、それらのメディア文化が日常的に伝播していたと同時に、国境を隔てていたためある程度の客観的な距離を保ち続けることができた、というくだりだった。
やはりメディアリテラシーというのも、世界で単一なのではなく、実際の地勢に大きく影響されるのだな、と思った次第。さらに、楽観的に見られがちなマクルーハンの「グローバル・ヴィレッジ」の構想も、その負の側面もしっかり見通していたという話も新しい発見だった。それは十分今日のブロゴスフィアに通じるものなんだろうな、と思った。