[写真集]small planet

 雑誌やポスター等のコマーシャルだけではなく、近年欧米のアートシーンでも注目を浴び始めた本城直季の初写真集。芸術系の写真集としては異例の売れ行きを見せた。
 現実を模型のように見せるエフェクト効果によって、写真がまだ知覚を変容させる力があることを示した。本来、大判カメラによってレンズのゆがみを修正するために使うアオリを、逆にゆがみを「アオる」ように使い、ピントを全体的に合わすために使う絞りを逆に全開にすることによって、被写界深度が歪になることで現実が模型のように見える効果を使ったものだ。
 大判カメラを触ったことのあるものならある程度誰でも知っている効果で、そのように言うものもいるが、それこそが本城直季が「コロンブスの卵」をものにしたことを強く証明したということでもある。本城直季と前後して海外にも同じような手法を使った作家が数人いるが、効果を知りつくした上での被写体の選び方やフレーミングのキャッチ―さは本城直季が抜き出ている言えよう。万人に迎えられたのもその効果の確かさゆえだ。

 かつて、ブレッソン的美学にのっとったドキュメンタリーフォトの隆盛の後に、本来タブーであったブレボケを駆使した一連の作家群が現れたが、大判カメラのアオリやパンフォーカスを覆すタブーの手法が流行することと比較するとアナロジーとして面白い。

small planet―本城直季写真集

small planet―本城直季写真集