TOKYO STYLE

 『ROADSIDE JAPAN』に先立って編集者、都築響一の真骨頂を表した名著。90年代初頭の東京にパラサイトして住む若者の部屋の生態のありのままを描写。バブルの頃にインテリアブームが訪れて、ありあえないカタログがもてはやされたことに対するアンチテーゼとして作られた。
 ただ、まだ日本が本格的な不況に入る前の頃なので、全体的に楽観的な心地よさが立ち込めている。部屋のインテリアにも80年代的なセンスも数多く残っているのが象徴的だ。
 今では必ずあるだろうパソコンほとんどもないし、テレビもブラウン管だし、携帯電話は普及していない。フリーターやニート、引きこもり、パラサイト・シングル下流社会なんて言葉もまだない頃の、気ままに暮らせる生活ができた東京生活のリアルが多くの若者の支持を集めた。
 一方、不況が長く続くにつれ、本格的にパラサイトの時代が訪れる。その舞台は東京郊外に移っていったのかもしれない。

TOKYO STYLE (ちくま文庫)

TOKYO STYLE (ちくま文庫)

 『TOKYO STYLE』にインスパイアされ、人類学的なアプローチで行った展覧会に、2002年に民族学博物館で行われた『ソウルスタイル』がある。建築人類学者の研究員がソウルに住む李さん一家を調査し、家財道具の一切を収集し、ソウルの室内を再現した画期的な展覧会だった。
 室内と記憶が密接に結びついていることを力強く証明した。

2002年ソウルスタイル―李さん一家の素顔のくらし

2002年ソウルスタイル―李さん一家の素顔のくらし