あったかもしれない日本

 アメリカの未完の都市・建築を紹介した アリソン・スカイ、ミッシェル・ストーン『UNBUILT AMERICA』(日本版は『幻のアメリカ建築)』を下敷きに、近・現代の日本の未完のプロジェクトを詳細に紹介したありえたかもしれない現在を照射するための反建築史。
 1940年、皇紀2600年の幻の万博計画は、最近よく知られるようになってきたが、戦前から戦後の日本人が未来の国土をどのように考えていたかしる意味でも、貴重な都市・建築史である。
 また、現在だからこそわかる結実した巨大プロジェクトとしなかったプロジェクトの差を考える意味でも面白い。
 同時に、未完のプロジェクトの中でも、潜在的な可能性が長い間潜伏して結実することもある。1970年の万博などは、1940年の万博のリベンジという意味合いもある。もしかして、そのような過去の未来プロジェクトが無数に潜伏しており、いつかひょっこり顔を出すかもしれない。
 どちらにせよ、現在に生きる我々が、未来をどのように想像するのか、それが未来のあり方を大きく左右する。現在における未来計画について思いを馳せずにいられない書である。
 
 個人的には、琵琶湖に運河を掘って、日本海と大阪湾をつなぐプロジェクトが特に興味深く、もし実現したらどうなっていたか、あったかもしれない現在を想像するのが楽しかった。モデルはパナマ運河だったらしい。水面の高さが違うので、何段階か堰を作ってコントロールする必要があるようだ。

また、日本列島と朝鮮半島を、トンネルで結ぶというプロジェクトもあったらしい。現在も続く鎖国的観念に通じるようで興味深い。

あったかもしれない日本―幻の都市建築史

あったかもしれない日本―幻の都市建築史

Unbuilt America: Forgotten Architecture in the United States from Thomas Jefferson to the Space Age

Unbuilt America: Forgotten Architecture in the United States from Thomas Jefferson to the Space Age

幻のアメリカ建築

幻のアメリカ建築