NAMI

 佐渡島に住む真言宗系の僧侶でもある写真家が、日本海の荒波をデジタルカメラで撮影した写真集。しかし、それが佐渡日本海という属性を剥ぎ取られ、ただ「NAMI」として存在し、その得たいの知れない「NAMI」の中に引き込まれる不思議な写真になっている。
 興味深いのは、2000年以降、デジタルカメラの普及度に加速がついて、一眼レフデジカメの登場によって、フィルムカメラのクオリティに追いついた頃の写真であり、自然を撮影していながら今までのアナログ写真的な美学ではない、デジタルの美学が台頭してきたのではないかと思われることだ。
 フィルム写真の現像は水を必要とするが、デジタル写真には必要ない。そのデジカメで水の塊を映し出しているところに新たな感性の響きがあるようにも思える。
 未だ、アナログ的な感性の写真が多いなか、ドメスティックな環境を乗り越える突き抜けたデジタルの感性の写真であることが心地よい。

NAMI―梶井照陰写真集

NAMI―梶井照陰写真集