写真集

NEW DIMENSION

世界を旅する石川直樹の本格的写真集の第二弾。だが、今回の旅は、空間の旅であるとともに、時間を遡行する旅でもある。世界中に残る古代の壁画に至る道程をシークエンスで映し出したものだ。同時に、壁画に刻まれた絵画の原型から、人類のイマジネーション…

NAMI

佐渡島に住む真言宗系の僧侶でもある写真家が、日本海の荒波をデジタルカメラで撮影した写真集。しかし、それが佐渡や日本海という属性を剥ぎ取られ、ただ「NAMI」として存在し、その得たいの知れない「NAMI」の中に引き込まれる不思議な写真になっている。 …

PILES OF TIME

恐山、熊野という2つの聖地への道程の日常と聖性が去来するプロセスそのものを提示した写真集。この世がハレとケという二項対立ではなく、その間の空間があることを、聖地につながる道をたどることで写し取った。また、写真と写真の間の、行間、いわば写真…

TOKYO STYLE

『ROADSIDE JAPAN』に先立って編集者、都築響一の真骨頂を表した名著。90年代初頭の東京にパラサイトして住む若者の部屋の生態のありのままを描写。バブルの頃にインテリアブームが訪れて、ありあえないカタログがもてはやされたことに対するアンチテーゼと…

ROADSIDE JAPAN―珍日本紀行

メイド・イン・トーキョーが東京のおかしな建造物の組み合わせをサーベイしたものならば、ROADSIDE JAPANは地方に散見されるおかしなオブジェを記録したものだ。 ただ、「おかしな」と言いながらどのオブジェにも既視感があるのが不思議だ。それほどに、どこ…

東京郊外 TOKYO SUBURBIA

東京郊外の住宅街のドラマティックではない日常を淡々と撮影した90年代という時代を濃密に宿した名作。 大判でほとんど演出をせず目線の高さで撮影されているが、カラー写真を白く焼き付けており、日常生活の非現実感が強調されている。 この日常の非現実感…

建築の黙示録

廃墟をテーマにした写真の金字塔といえば、この作品においていない。 大版カメラによる廃墟の美しさは見るものを圧倒する。 ロマン主義な滅びの美学と比較するとやや即物的ではあるが、 解体現場を美的に昇華した作品であることは間違いない。建築の黙示録作…

人間の土地

先日、紹介した奈良原一高の『人間の土地』の軍艦島だが、日本の戦後芸術の中でもとりわけ象徴的なのは、フランスのポンピドゥー・センターで1986〜1987年に開催された日本の現代美術を紹介する展覧会『前衛芸術の日本』展の一番最初に展示されていたからで…

THE VOID

近年、活躍の目覚しい石川直樹の最初の本格的写真集。世界へ冒険旅行に行き、その経験をテキストと写真で表現してきた石川が、写真を本格的な表現の出力先と射程を定めた決意表明のような作品でもある。 それ故に、冒険記的な側面はまったくなく、被写体に対…

ライム・ワークス

この作品で木村伊兵衛賞を獲得した畠山直哉の記念碑的な作品。石灰工場=ライムワークスと石灰山=ライムヒルズからなる。 畠山直哉が岩手に生まれ育ち、住まいの近くに石灰工場があったことが、原点となっている。それ以前は、コンセプチュアルなモノクロの…