パノラマの世紀

 19世紀にスコットランドの画家、パーカーが考案した絵画を円形状に包み込み、内側から眺める視覚装置。パノラマをはじめとして、ディオラマ、マレオラマなど、当時急激に視覚装置が発達した。
 それは光学機器の発達だけではなく、蒸気による交通革命によって遠くの距離を一望に体験できるようになったからでもある。
 ただ、パノラマを中心とした視覚装置は、写真と映画を生み出し消失していった。当初より芸術性よりもヴァーチャルリアリティ的なものを追求してものだったため、次々と現れる映像装置の発達の中で存在価値を失っていったのだ。しかしその思想は、万博を中心に現在まで受け継がれている。
 パノラマの中に象徴的に現れている19世紀の視覚革命と知覚変容を描写した良書。

パノラマの世紀

パノラマの世紀