宮武外骨の反骨

 先日、歴史秘話ヒストリア宮武外骨が特集されていた。赤瀬川原平が取り上げて、書籍にしたりしていたので名前は知っていたが、その経歴や活動について知らなかったので、ものすごく面白い人だったということがわかって参考になった。
いわゆるジャーナリズムのはしりの人で、「滑稽新聞」を発行し、当時から権力批判をユーモアを交えた挿絵付きで行っていたが、何度も牢屋に入れられ、戦中になって言論の自由がなくなったため、東京大学で明治の報道資料を集める資料庫を作る活動を行った。
 当時の外骨を知る人は、信念を曲げ権力に擦り寄ったように思ったそうだが、 東大という、官僚機構を生み出す中核部に入り、一番安全な場所で明治後期から花開いた多種多様な報道資料を後世に残そうという、壮大な企みだったのだ。それは成功し、今でも、明治の言論事情を知るための一級の資料が集まる研究者にとって重要な場所になっているらしい。
 
 赤瀬川原平のファンだったので、他の書籍はずいぶん読んだが、宮武外骨だけは読んでなかったので、いい機会だから読もうと思った。赤瀬川原平は、今でこそ「老人力」のベストセラー作家として知られているが、かつてはバリバリの現代美術作家で、巨大化した千円札を作り、模造として刑事訴訟を受けたこともある、反骨の芸術家だった。その後の櫻画報などの挿絵漫画等の活動の先駆者として、なんらかの機会に宮武外骨を発見したのだろう。本を読んでないので詳しくはわからないが。

 宮武外骨は、関東大震災の前までは、大阪在中だったこともあるし、上方文化の大きな影響も伺える。明治の後期は、江戸時代の落語や川柳など、やはり日本の文化を継承しているのではないかと思う。江戸と明治は急激に変化したのは間違いないが、その連続性にこそこれからは注目していった方がいいのではないかと思う。

外骨という人がいた! (ちくま文庫)

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