雑誌の未来

 スタジオボイスが休刊したということで話題になっている。
80年〜90年代の代表的なカルチャー雑誌で、サブカルチャー文化を牽引していた雑誌だけに、時代が転換期を迎えていることを象徴的に表している。
 雑誌を定期購読する文化は、何時頃はじまり、何時頃なくなったのだろう。どこか、ラジオ番組にも近い、その身内感、それを購入することで、その文化に参加している感覚を共有することができた。だから、ラジオ番組を毎回リスニングし、時に葉書を投降するように、雑誌を定期購読し、葉書を投稿していたのだ。

 しかし90年代後半からインターネットの本格的な普及にともない、大半の情報は無料で購読できるようになり、また、読者のニーズも千差万別になり、サブカルチャーをひとくくりにできなくなっていった。
 雑誌の誌面のスペースや、発刊サイクルではとても、ムーブメントを捕まえれなくなってきていたし、同時に、ムーブメントを積極的に牽引することもできなくなってきたのだ。

 また、雑誌を支える広告のモデルも訴求効果があるかずいぶんあやしいものであるということも、クライアントがわかってきてしまっていた。

 雑誌を立ち上げる主役は、20代であると誰かが言ったが、雑誌というものは基本的に、若者文化とともにあった。しかし、若者が立ち上げるメディアは、何時しかウェブサービスになっていった。
 雑誌は、若者文化の主役の座ではなくなってしまったのだ。

 現在、ブログやSNS、ブックマークなどが多様な言論状況をウェブにもたらしており、それは素晴らしいことだと思うが、文章を掲載するときに、雑誌のようなメディアが持つテーマ、編集者による校正、文章量などの制約がなくなっているため、プロフェッショナルとしての文章の精度の向上が得られにくいのはやや懸念されるところだろう。

 最近の雑誌は、特集主義で各雑誌が持っていた一貫性はなくなってきており、定期購読する人も少ないだろうが、今後、雑誌がどの程度減少し、どの程度の適正規模になるかはまだわからない。
 ウェブとの連動なども多くなってきているし、新しい編集スタイルの雑誌が出てくるまで少しの間、時間が必要だろう。

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2009年 08月号 [雑誌]

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2009年 08月号 [雑誌]