トヨタの社会

 戦後の社会をどんな社会だったかと言えば、やはり車中心の社会だったのではないかと思う。車が輸出の中心であり、産業の中心であり、車の普及に付随して、地方行政の中心は道路工事だった。田中角栄日本列島改造論でも、道路交通によって、日本の交通網を整備することが主眼だった。

 そして、それはロードサイドビジネスであるイオンなどの巨大スーパーチェーン、家電量販店、コンビニ、ファミリーレストラン、ガソリンスタンドなどを生んだ。
 テレビの最大広告主は、車メーカーだった。


 しかし、長い不況下で若年層の所得は低下し、車の所有率は著しく減った。そして、今回の世界同時不況で、車産業自体が危機に陥っている。


 地方は、都市の一極集中で人口は減り、車の普及で駅前の商店街は壊滅状態になった。一方、都市は車が不必要なほど、交通網が発達し、車は所持する必要がなくなっていった。
 都市は客を獲得するために、タクシーで溢れかえっている。


 もはや、車の社会は飽和状態であり、国内の伸びしろは、ハイブリッドなどへの買い替えくらいだろう。
しかし、シェアリングカーなどの動きも普及していき、マイカーの割合はさらに減ってくと思われる。

 アメリカの新幹線構想や、ヨーロッパの市電の普及などの例もあるように、車社会は大きな転換点を迎えている。また、所有という思想もまた同様である。

 現在はインターネット社会であること確実だが、車社会が生み出した様々な付随産業までは波及していない。

 どちらにせよ、車社会によって、大きく変貌してしまった、日本の風景が良い方向に戻ることを期待したい。

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

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