大政奉還再び
1世紀に1度(その前が1929年なので)の大不況の中、日本では150年ぶりとも言える、政治の大改革が起こりそうである。
ご存知のように、明治以前の幕藩体制では、小さな国の集合体を統治しているという構造だった。
しかし、幕府の弱体化と、外国からの圧力によって、中央集権の強い政府を作らないと占領される危険性があったため、時代を敏感に感じ取った幕末の志士達の活躍により、天皇制を中心とした中央集権の政治機構を作って乗り越えた。
薩長土肥の藩の出身者が中心になったのは、外国貿易によって、独自に資産を蓄え、海外情勢にも通じていたことがその要因である。
武士階級はなくなり、代わりに近代的な軍隊、大学、官僚が生まれた。そこから中央集権が始まった。
さらに、その中央集権の機構は、太平洋戦争の時代の統制経済や大政翼賛会によって、さらに、強固なものになり、敗戦を経たものの、基本的にその強い中央集権構造のまま今日に至っている。
そのあまりにも強い中央集権と官僚体制は、膨大な既得権益を生み、いつしか省益主義を助長させるようになってしまった。高度経済成長を経て、バブル経済が崩壊して、国がすっかり赤字体質に変わってしまっても、その省益主義は変わることがなかった。もともとは、中央集権にしないと、西洋列強に対抗できなかったからなのだが、何時しか、それが腐敗を生む温床になっていったのだ。
今言われている公務員改革や地方分権は、まさに、明治以前とまでは行かなくても、地方に権力を再び返す動きに他ならない。東京が肥大化したのも、中央集権体制では、東京にいた方が、流れていく行政予算にありつけやすかったからである。そういう意味では、一部の企業も甘い汁をすすりにいっていたのである。
少なくとも、太平洋戦争前までは、今ほど中央集権ではなく、地方はそれなりに独自色はあったし、様々な機能が分散していた。松下、シャープ、野村証券、武田薬品など、戦前の大阪で勃興した企業は多い。朝日、毎日をはじめとした新聞社や出版社も大阪で生まれたものだ。
今はほとんどが東京本社になってしまったが、それは今日のネットワーク外部性ではないが、集中すればするほど、さらに集中を加速させるからである。
今回、その行き過ぎた中央集権が解体され、最適な形を模索するのは非常にいいことだと思う。今回の改革の主役は、橋下知事や東国原知事などの、地方の自治長であることは間違いない。
しかしながら、今回は再び鎖国するというわけにはいかない。貿易でかせいでいる国が、それをより強化する形で、地方自治を進めなければならないということだが、それができるのは自民党か民主党か。はたまた、第三極の党か。
- 作者: アルバート・ラズロ・バラバシ,青木薫
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