世界陸上のもう一つの見所 増田明美の解説

 女子マラソンは視聴率が高かったらしい。TBSも久々に視聴率が高く喜んでいるとか。
今回の注目は、やはり、ボルトの驚異的な走りだったと思うが、
僕はいつも女子マラソンの「解説」に惹かれてしまう。

 なんと言っても、いつも増田明美の解説が格別だからだ。今回は、高橋尚子も加わり、静の増田に動の高橋と言った感じで解説がされていた。

 日本の日曜日のお茶の間の風景で、マラソンや駅伝はお馴染みで、子供の頃から父親がマラソン中継などを見ていると2時間半にもおよぶ間、ほとんど劇的な動きのない映像を独占されることに苛立ちを覚えていたし、そういう子供は多いだろう。
 大人になってからも、マラソンの楽しみというものはそんなにわからないままだったが、シドニーオリンピック高橋尚子とそれを解説する増田明美を見てから、考え方が変わった。
 というか、増田明美の解説がうますぎるのだ。

 増田明美は自身がランナーであり、同時に、いろんな人脈もあるので、サイドストーリーをよく知っている。だから、ランナーが走っているときに、そのエピソードをうまく挿入することで、単純に走っている映像を何倍にも劇的に興味深くする能力があるのだ。
 淡々とした静かな口調なのだが、その説得力はすさまじい効果を画面に及ぼす。

 「今、Qちゃんは1人で走っていますが、彼女は何人もの人たちの思いをのせて走っていると思います」とかそんな感じだったと思うが、とにかく、実際はどうかしらないけれど、いかにもというランナーの心理を描写していくのだ。
 ああ、こういうふうに解説すれば、マラソンはこんなに劇的に見れるのだ、と感心した覚えがある。


 今回は、その高橋尚子も解説に加わり、彼女なりの個性のあるコメントをしていたが、増田明美の解説とコントラストがあってなかなか楽しめた。
 途中で、高橋尚子が、シドニーのスパート時に、サングラスを投げてからスパートをした時のエピソードを、増田明美が聞いたりと、増田明美の中では、まだ高橋尚子というランナーが心の中で走り続けているのだな、と感じる一幕もあったりして、なかなか豪華な競演だったように思った。

 今回は、尾崎が銀をとるなど、女子マラソンは多いに活躍したが、女子マラソンを何倍も面白くする増田明美は、新しいストーリーテラーとしてもっと注目していいように思う。
 Qちゃんは、これからは、増田明美という巨人に対して、どれだけ迫れるか、新しいマラソンが始まっている。