海を見ていた午後
言わずと知れた、荒井由美の名曲で、好きな人も多いだろう。特にその詞が、印象的であることで知られている。
「ソーダ水の中を貨物船が通る」
という、一瞬でその光景が浮かぶ、まるで俳句のような映像詞は、荒井由美ならではのものだろう。
荒井由美が、武蔵野美術大学多摩美術大学出身*1というのは、よく知られているが、東京芸大には入学できなかったものの、デッサン力は相当あったらしい。
そのためか詞が映像的であることを当人も自覚している。
詞を書くときに、まず、そのシチュエーションの映像が思い浮かび、スケッチを書くらしい。そこから詞をつむぎだしていく。
今でこそ、ビデオクリップが普通になり、音楽と映像を同時に思い浮かべる人は多いだろうが、MTV前夜にブレイクした当時はまだその感覚は新鮮だった。
この前ふとJRの駅を歩いていたら、「海を見ていた午後」のフレーズを使った横浜の観光ポスターが貼られていた。
おそらく、洋館の前の山の手と書いたバス停付近を外国の学生服に似た格好をした女性が歩いている、というもので、大判カメラで撮影したであろう写真は、全面的にフォーカスがあったっていて、なかなか凝ったものだった。
歌詞というのは、音楽があってこそ活きるものだとは思うけれど、歌詞の一部だけ抜粋して、一つの短編詩として詠ませる力があるのはさすがだなと思った。
あれは、原曲を知らなくても、十分、引き込まれる歌詞だろう。
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*1:コメントで指摘されました。失礼しました。