夢と現(うつつ)のスーパーフラット
先日、NHK教育の日曜美術館で『春日権現験記絵』が特集されていた。
『春日権現験記絵』は、春日大社に 奉納するために、宮廷絵師の高階隆兼によって描かれた全20巻の絵巻であり、春日権現の霊験の偉大さを描いたものである。
その彩色の美しさ、人物描写の細やかさには驚かされた。鎌倉時代の世相が生き生きと蘇ってくる。
なかでも驚かされるのは、その現実感である。
霊験を描くのだから、もちろん、春日権現という神霊が実在し、それを信じているのは当然のことながら、夢の中の出来事も同じ巻物の平面上に等価で描かれている。
当時は、夢の世界と現実の世界は、同じ重みを持って感じられていたのだ。
夢の世界を描く、超現実=シュールレアリスムが流行したのは、20世紀に入ってからなので、700年も前にその手法を先取りしているとも言える。
春日権現も、顔は描かれないものの様々な形で登場する。その描き方も実に巧みである。
つまり、神と人、夢と現実という二つ世界が、同居しているという感覚を、見事に表してるのである。
村上隆が、日本人の感覚を、超平面的=スーパーフラットという言葉で表現しているが、その意味は、単純に3次元のものを2次元的に描くということだけではなく、次元の異なる世界を同じ地平に描くことまで包含しているのかもしれない。
それが、今ではアニメのキャラクターと現実を同居させるAR技術として受け継がれているのだろうか。
当時と現在の世界観の差に驚きを覚えると同時に、現在との共通性も強く感じる貴重な作品である。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2009/1108/index.html
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