開閉する日本
NHKが全面的に宣伝している「坂の上の雲」。さすがに俳優はいいし、ロケは本格的だし、面白い。
まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている。
という、ドラマのはじめに出てくる司馬遼太郎の小説の冒頭の文は、このドラマと時代背景を象徴的に表している。
長い鎖国から目覚め、開国へと舵を切った小さな国で、若者達の成長とともに、国が成長していく、という二つの成長が完全に同期した珍しい時代を、3人の若者を通して描いていく。
このような時代の渦中にいた若者達には、人生の成長こそが国の成長だった。
日本という国は、閉じる時代と開く時代が交互に表れる不思議な国だ。大きく言って西の時代は開く時代、東の時代は閉じる時代である。薩長土肥の若者によって開かれた明治は、まさに西の時代だったと言えるだろう。
その中に、薩長土肥ではない伊予の国から、日本の近代軍隊を整えた秋山兄弟と正岡子規が輩出される。
若者のたぎるパワーは、閉じた江戸の時代が長いからこそ凄まじい。それが明治という気風を生んだことだろう。
その後、国際連盟を脱退して、国は閉じてしまい、太平洋戦争で惨敗した。そして、また、戦後、開いていく。
今は、また閉じている時代かもしれない。開く時代は、開く時代を参照し、閉じた時代は閉じた時代を参照する。
家康は、源頼朝を範とした。今、江戸がブームなのも、閉じた時代を求めているからだろう。
東洋の小国が、いち早く近代国家を成し遂げ、世界の近代国家の仲間入りをした。それは大きな自信となったが、太平洋戦争で惨敗した。
戦後、また高度経済成長を遂げ、世界市場を覇権したが、バブルがはじけ長期の不況に陥った。
我々の日本は、それらの時代をへて素晴らしい国であると思ったり、駄目な国だと思ったり、自尊と自虐が交互に出てくる不思議な国である。
しかし、明治期の若者にとっては、前しか見てない幸せな時代だったと言えるかもしれない。
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