スキャンダルを超えて

 マスターズから、タイガー・ウッズが復活する。少し見たが、そのとんでもないテクニックは健在だ。4ヶ月のブランク、矢のようなマスコミや世間からのバッシングの後ということを考えると、さらにその凄さが倍増して感じられる。

 ゴルフは紳士のスポーツと言われ、マスターズは特に、観衆さえも招待制なので、日本の石川遼君目当てのにわかギャラリーのような失礼な真似はいっさいしない。だからこそタイガーは、マスターズを復活の舞台に選んだんだろう。もちろん、メジャータイトルの中でももっとも権威があり、タイガーが最年少記録を打ち立てた特に思いいれの強いコースでもあるというのもあるだろう。
 ギャラリーは、純粋なゴルフファンなんで、スキャンダルを見たいわけではなく、純粋にタイガーの芸術的なテクニックを見たいから、余計なことはしない。その代わり、空からの非難が少しあったようだが。


 ゴルフは、他のスポーツと違って、若さや体力と強さが比例しない。メンタルの要素がもっとも強いスポーツの一つだろう。それだけに、経験値の高いベテランが勝つ場合も多々ある。
 その中で、若い時代から群を抜いて強かったタイガーは、考えられないくらい他の選手と技術力の差があると考えていい。普通はあり得ないことなのだが。
 
 しかし、メンタルな側面は、タイガーもまた彼の技術ほど完璧ではなかったようだ。若くして最強を手に入れただけに、そのモチベーションを維持することは別な難しさがあるだろう。

 それに比べて、似たパブリックイメージを持つイチローの求道者的なストイックさがより際立って感じられる。タイガーの性依存症の治療は仏教的なトレーニングが取り入れられていたそうだが、このスキャンダルを経て、メンタルにも成熟した選手になってほしいものである。