人間の土地
先日、紹介した奈良原一高の『人間の土地』の軍艦島だが、日本の戦後芸術の中でもとりわけ象徴的なのは、フランスのポンピドゥー・センターで1986〜1987年に開催された日本の現代美術を紹介する展覧会『前衛芸術の日本』展の一番最初に展示されていたからである。
軍艦島がその過酷な労働環境だった人工島だったにもかかわらず、強烈な魅力を放つのは、それがそのまま日本という工場島の隠喩になっていたからに他ならない。軍艦島は端島の俗称であり、もちろん、その形容が遠方より見ると、軍艦に似ているからそう呼ばれているわけだが、狭い国土に工場が並び立つ日本列島の縮図としても想起させられる。
ポンピドゥーセンターのキュレーターが、展覧会の最初に持ってきたのは、そういいう意図だろうと思われる。
- 作者: 奈良原一高
- 出版社/メーカー: リブロポート
- 発売日: 1987/04
- メディア: 大型本
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
近年、日本の近代化遺産、産業遺産が注目されているが、軍艦島はその代表格でもある。現在、世界遺産への登録運動が進められている。
- 作者: 増田彰久
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/09
- メディア: 新書
- 購入: 3人 クリック: 25回
- この商品を含むブログ (16件) を見る
ちなみに、『前衛芸術の日本、1910〜1970』展については、当時ポンピドゥー・センターのキュレーターをしていた岡部あおみの『ポンピドゥー・センター物語』に詳しい。展覧会が内側から描写されている。
- 作者: 岡部あおみ
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (7件) を見る