アール・デコの建築

NHK美の壺」シリーズのムック。日本でも1920年代に流行したアール・デコの建築の魅力をコンパクトに紹介。
実はグローバルなレベルで、アール・デコは世界に普及した。
昨今のグローバリズムを先取りする20年代の国際的ブームと各地域の独自の要素が結びついたアール・デコの魅力は、同時代性と地域性の二つの要素を併せ持つところにある。
詳しくは、番組でも達人として登場するアール・デコ建築の研究家、吉田鋼市の寄稿文を参照されたい。

NHK 美の壺 アール・デコの建築 (NHK美の壺)

NHK 美の壺 アール・デコの建築 (NHK美の壺)

さらに、アール・デコの建築に興味を持たれた方は、吉田鋼市の単著、『アール・デコの建築』をお勧めする。世界中に普及したアール・デコの建築を概観できる。
なかでも、今アール・デコの建築が流行する要因、アール・デコの建築を活用した街づくりなど、現代に活きるアール・デコを知ると、日本のアール・デコについてより興味を持ってみることができる。

アール・デコの建築―合理性と官能性の造形 (中公新書)

アール・デコの建築―合理性と官能性の造形 (中公新書)

特に、吉田鋼市の視点が興味深いのは、アール・デコをかなり広い様式としてみていることである。近代建築は、短い間に細かい様式が多く現れているため、個別の建築を細分化、分類化して見てしまいがちだが、それらに通低する様式的流行をアール・デコを通してグローバルな視野で捉えているのだ。

その要因になっているのは、鉄筋コンクリートの登場という建築の構造革命である。
建築を構造史的な観点で見ると、意匠・装飾の歴史もわかりやすい。
構造的視点から、近代建築を読み返したい人には、村松貞次郎の『日本近代建築の歴史』を読まれたい。

日本を代表するフランス直系のアール・デコ建築、旧朝香宮邸を知りたい人は『アール・デコの館』を読まれたい。

アール・デコの館―旧朝香宮邸 (ちくま文庫)

アール・デコの館―旧朝香宮邸 (ちくま文庫)