東京郊外 TOKYO SUBURBIA

 東京郊外の住宅街のドラマティックではない日常を淡々と撮影した90年代という時代を濃密に宿した名作。
 大判でほとんど演出をせず目線の高さで撮影されているが、カラー写真を白く焼き付けており、日常生活の非現実感が強調されている。
 この日常の非現実感は、その後の若手の写真家に共有されて受け継がれている。

 団塊の世代が生活を築いた東京郊外という歴史のない街で育った人が多数をしめるなか、多くの若者が共感をした。

東京郊外 TOKYO SUBURBIA

東京郊外 TOKYO SUBURBIA

 80年代に農村が郊外化していく過渡期を写した作品には、小林のりおの『ランドスケープ』がある。

 ホンマタカシは『メイド・イン・トーキョー』にも対談相手として登場するが、ユニット派との世代的な感覚を共有しているだろう。共通するのは、東京を単純に批判的、批評的な視点ではなく、良い面悪い面も含めて受け入れているところだろうか。

 郊外についての論考は、三浦展の「家族」と「幸福」の戦後史―郊外の夢と現実を参照されたい。

「家族」と「幸福」の戦後史 (講談社現代新書)

「家族」と「幸福」の戦後史 (講談社現代新書)