PILES OF TIME

 恐山、熊野という2つの聖地への道程の日常と聖性が去来するプロセスそのものを提示した写真集。この世がハレとケという二項対立ではなく、その間の空間があることを、聖地につながる道をたどることで写し取った。また、写真と写真の間の、行間、いわば写真間という見えない時間の存在を浮かび上がらせた、何重にでも読み取れる傑作。
 写真家が熊野の出身で、血筋も那智大社宮司の家系という。ちなみに鈴木姓が日本で一番多いのは、熊野周辺に住んでいた鈴木家を中心とした熊野比丘尼と言われる人々が、熊野三社を喧伝するために、日本各地に布教したからである。鈴木家はもともと物部氏を祖先とする神官の一族である。
 その意味でも、現代の鈴木姓を力強く引き継ぐ写真家であると言える。

PILES OF TIME―鈴木理策写真集

PILES OF TIME―鈴木理策写真集