アール・デコ建築の流行

アール・デコの建築がここ数年、世界的に見直されてきている。おそらくアール・デコ建築が流行してから80年程度の歳月を経たため、当時最先端だった鉄筋コンクリート造の耐久性が問題になってきおり、解体や保存の問題が浮上している、というのが原因のひとつだろう。
同時に、世界的にグローバル化の流れの中で、産業転換が急務になり、各地域で街興しの素材を求めているということがあると思う。その際、世界的に普及しているアール・デコ建築は、現在までつながる地域のアイディンティを再定義する上で大きな役割を果たすからだと思われる。
アール・デコは、現代のグローバリズムのはしりと言える現象で、世界的に構造や意匠が流行したのだが、皮肉にも新しいグローバリズムの影響で地域性が淘汰されていく中で、地域のアイディンティティとなろうとしているのだ。

さらに、興味深いことに、アール・デコは、20年代〜30年代にかけて流行した様式であるが、その間にちょうど世界恐慌が起こるのである。そのため、前期のアール・デコと後期のアール・デコでは様式や流行のスタイルがかなり変化する。特に、マイアミの沿岸部に建てられたアール・デコは、トロピカル・デコとも言われ、独特なパステル・カラーと丸みを帯びたデザインで知られているが、これは直接的に恐慌対策であったニューディール政策によって建てられたものである。

ニューヨークの摩天楼に代表されるバブル的なアール・デコの後に、不況のアール・デコが起こるのだが、ここ数年の流行を見て、このバブルの後に不況が起こり、アール・デコリバイバルも変わるかもしれないと思っていたら案の上である。

マイアミ・デコの素晴らしさを考えると、この後に来るアール・デコリバイバルも素晴らしいものであってほしい。